大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和58年(特わ)2856号 判決 1983年12月22日

裁判所書記官

浅野正久

本店所在地

東京都足立区東和四丁目二五番九号

日立自動車交通株式会社

(右代表者代表取締役佐藤一意)

本籍及び住居

埼玉県越谷市大字南荻島三四二五番地

会社役員

佐藤一意

昭和二年二月二一日生

右両名に対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は検察官三谷紘出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

一  被告人日立自動車交通株式会社を罰金一、五〇〇万円に、被告人佐藤一意を懲役一〇月に、それぞれ処する。

二  この裁判確定の日から三年間被告人佐藤一意に対する刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人日立自動車交通株式会社(以下被告会社という)は、東京都足立区東和四丁目二五番九号に本店を置き、一般乗用旅客自動車運送等を目的とする資本金一、四〇〇万円の株式会社であり、被告人佐藤一意は被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人佐藤一意は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空人件費を計上する等の方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和五四年九月一日から同五五年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七、〇二二万三、〇七三円あった(別紙(一)修正損益計算書参照)にかかわらず、同五五年一〇月三一日、東京都足立区千住旭町四番二一号所在の所轄足立税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八六七万七、五〇五円でこれに対する法人税額が二二七万四、五〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書(昭和五八年押第一六一八号の一)を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二、六八九万二、九〇〇円と右申告税額との差額二、四六一万八、四〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ、

第二  昭和五五年九月一日から同五六年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九、二〇四万三、八九一円あった(別紙(二)修正損益計算書参照)にかかわらず、同五六年一〇月三一日、前記足立税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二、三七六万〇、五〇一円でこれに対する法人税額が八六一万六、三〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書(前同押号の三)を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三、七二九万五、二〇〇円と右申告税額との差額二、八六七万八、九〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全般の事実につき

一  被告人佐藤一意の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書二通

一  伊東和枝の検察官に対する供述調書二通

判示全般の事実、特に虚偽過少申告の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書二袋(昭和五八年押第一六一八号の一、三)

判示別紙各修正損益計算書中の各当期増減金額欄につき

一  大蔵事務官作成の調査書二一通

(法令の適用)

一  該当の罰条

(一)  被告会社

判示第一の所為につき 昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条、一六四条一項

判示第二の所為につき 法人税法一五九条、一六四条一項

(二)  被告人佐藤一意

判示第一の所為につき 行為時において昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一項、裁判時において右改正後の法人税法一五九条一項(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)

判示第二の所為につき 法人税法一五九条一項

一  刑種の選択

被告人佐藤一意につき、いずれも懲役刑を選択

一  併合罪の処理

(一)  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

(二)  被告人佐藤一意

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(重い判示第二の罪の刑に加重)

一  刑の執行猶予

被告人佐藤一意につき刑法二五条一項

(量刑の事情)

本件犯行は被告人佐藤一意が被告会社の事業拡張等のため裏資金を蓄積する等の動機から、経理担当者に指示して架空人件費の計上等の不正経理により二事業年度分の被告会社の所得のうち合計一億二、九八二万円余を除外して虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、合計五、三二九万七、三〇〇円の法人税を免れていたものであって、その逋脱税額の正当税額に占める割合、即ち逋脱率もそれぞれ九一・五%、七六・九%に達するものであることからすれば、被告人らの刑責は重いものがあるといわなければならない。しかしながら、被告人らは本件の査察を受けて以降反省し調査・捜査に協力し本件対象事業年度を含めて五事業年度分の法人税につき修正申告をなし、本税、加算税等の附帯税のほか、事業税等の地方税増加分についても納付ずみであり、その後の経理の改善にも見るべきものがあること等被告人らに有利な情状も認められる。そこで以上のほか本件事案の審理に顕れた一切の事情をも総合勘案し、主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 池田真一)

別紙(一) 修正損益計算書

日立自動車交通株式会社

自 昭和54年9月1日

至 昭和55年8月31日

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

日立自動車交通株式会社

自 昭和55年9月1日

至 昭和56年8月31日

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別紙(三) 税額計算書

日立自動車交通株式会社

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例